キレる17歳という言葉が、マスコミ紙上を賑わせたことがありました。ここ数年、いじめ、恐喝、殺人など大人顔負けの犯罪がこの世代の少年たちによって次々と引き起こされています。
17歳といえばもう少年じゃないという人もいるかもしれません。だけど17歳がまだ大人ではないことも事実でしょう。自分が17歳の頃は、どうだったのだろうかと考えてみました。
17歳といえば、私は高校2年生でした。親に対して反抗的だったり、大人は汚いとかずるいとか罵り、精神的には不安定な状態だったなあと思います。それだけに、父親になって、息子や娘がその年頃を迎えた時には、できるだけ当たらず障らずにしておこうと思ったのですが、その時子どもたちから言われた言葉は「そんな態度がムカツクんだよ」というものでした。「この野郎」と思わないでもありませんでしたが、金属バットで撲られでもしたら大変と、こちらが1歩譲ったのですが、果たしてそれでよかったのでしょうか。
かつて上智大学で教鞭をとり、神父でもあるグスタフ・フォス先生が、「日本の父へ」という本を出版し、その中で、自分の子どもの頃の思い出を語っています。
ある日の夕方のことだったそうです。お母さんに向かって悪態をついていたグスタフ少年を見つけたお父さんが「なんていうことを言うんだ。その口を閉じろ、自分の部屋に戻れ、今すぐにだ。」と叱ったのです。彼はふてくされて部屋に閉じこもりました。だから夕食の支度ができ、食堂に入った時も沈黙したままでした。その時お父さんが「散歩にいかないか」と誘ったのです。自分が悪かったとは思っているものの、謝るきっかけをつかめないでいる息子に、お父さんは今日1日なにもなかったように林の中を歩き、夕日に照らされた森を眺め、ねぐらに帰る小鳥たちの姿を見送るように口笛を吹きました。そして帰り道、「さっきの事だがなあ、お父さんは本当に残念だったよ。あれは男のいう事じゃない。お父さんは、お前に本当の男になってもらいたいんだよ」とさりげなく言ったのです。「人生には、かんしゃくを起こしたくなることもある。反抗したくなることもある。だけどエチケットが必要だ。とくに女性に対してはな。それが紳士というものだよ」そう言って息子の頭をなでると、家に入っていったそうです。
そのお父さんの厳しくも温もりのある戒めが、17歳とは逆の70歳になっても心の支えになっていると語るグスタフ先生。
そんな思い出に残る父親にならなければと思っている今日この頃なのです。