お説教をするのは、私たちお坊さんの務めです。しかし最近では話すことより、まず聞くことの方が大切だと思うようになりました。お寺には、悩みを聞いてもらいたい、自分のことを分かって欲しいと思っている人が沢山やって来ます。中には話がくどくて、逃げ出したくなるようなこともありますが、「そんな時には、聞いてやるのが坊主の功徳と思え」と亡き師父から諭されました。
そこで今日は、私が聞いた、聞き上手が得をする4つのポイントをお話しします。
その第1は、聞き上手は、人から好意を持たれるということです。ある若者のパーティで、数人の男性からプロポーズを受けた女の子がいました。彼女はなぜ男の子のハートを射止めたのでしょうか。その理由は、相手の話を聞くことに、精いっぱい努力したからでした。人は伴侶を求める時、何より自分を受け止めてくれる人を求めるものなのでしょう。だから、ある結婚詐欺の常習犯が警察に捕まった時「俺はなにもしてないよ。ただ、彼女たちの話を聞いてやっただけさ」とうそぶいたという話も残っています。もっとも、これはいい例ではありませんが、
聞き上手の第2の得は、相手から感謝されるということです。取り調べの上手な刑事は、犯罪者に、どうしてそんな罪を犯したのか、親身になって聞いてやるそうです。そうすると相手も心を開き、それが本人の更生の大きなキッカケにもなるとか。
そして第3の得は、人から信頼されるようになるのです。頭ごなしに説教するのでは、相手はついて来ません。経営の神様といわれた松下幸之助さんは、社員がどんな失敗をしても、言いたいことを全部聞き、それから叱ることがあれば叱るそうです。だから社員の方も「こちらの苦労が分かってもらえるという気がして、仕事に意欲が出る」と語っています、そして第4の得は、その結果、自分自身が大きな仕事ができるようになるということです。ある政治家が「どんな実力代議士といわれようと、まずは人の要望をよく聞くことだ。そうすると相手は、これは見込みがあるぞと、自分たちでその足がかりを作りはじめてくれる。それによって、要望は実現への基礎となる」と語っています。
1人前のお坊さんになるのにも、まずは人々の悩みをよく聞くことだと教えられる気がしたのです。