五月の第二日曜は「母の日」です。全国の花屋さんで、カーネーションが飛ぶように売れるのが、この日です。値段は、いつもより高くなります。「これじゃあプレゼントする子供が可哀想ですよ」カーネーションを作っている農家の人が、テレビでそう話していました。「だいたいカーネーションは、二月から三月の花なんです。だから五月のカーネーションは出来がよくないんですがね。なんで、こんなのが流行るんですかね」作っている人が分からないのだから、買っている人はもっと分からないのではないでしょうか。

 

 母の日が初めて設定されたのは、アメリカだそうです。そして、カーネーションをお母さんにプレゼントするようになったのは、ある少女が、亡くなったお母さんのお墓に白いカーネーションをお供えしたことに始まるのだそうです。母の日といえば、赤いカーネーションと思っていた私はびっくりしました。赤から始まって、白も出てきたのかと思ったらその逆だったのです。だったら、その少女は、少ないお小遣いの中から、精いっぱいの気持ちで、安いカーネーションの花を買ったのかもしれないと私は想像しました。

 

 感謝は、お金ではありません。でも恵まれた現代にはつい「まあ、あんたの感謝ってこの程度」といってしまうようなお母さんがいることも聞いています。

 

 そこで、そんなお母さんに、お釈迦さまのこんな話をプレゼントしてみたいのです。ある娘さんが、お嫁に行くことになり、お母さんが三つの心得を教えました。一つ目は美しい着物を着るように、二つ目は、おいしいものを食べるように、そして三つ目は、毎日鏡をみるようにというものです。これを陰で聞いてしまったお婿さんは、これはとんでもないことだとびっくりしました。でも結婚してみると、ちっともそんな様子が見えないのです。そこで、ある日「お前は、お母さんとは違うね」と尋ねてみると、彼女は、「いえ、お母さんと同じです」と答えました。「それではあの三つの心得は?」と聞くと、「ちゃんと守っていますよ。一つ目は、毎日洗濯した清潔な着物を着ることでしょう。二つ目は、からだをよく動かして、おいしく食事をいただくことでしょう。そして三つ目は、鏡を見て反省することでしょう。お母さんはいつもそうしていましたから」といったのです。こんなお婿さんと同じような勘違いをしない母と子であって欲しいと私は思っているのです。