お檀家まわりをしていると、いろんなお仏壇に出会います。一間もある大きな仏壇もあれば、現代の生活様式に合わせたコンパクトな仏壇もあります。世の中さまざまですが、せっかく立派なお仏壇を揃えながらホコリだらけでは、その人の心まで見えてくる気がします。
昔、金を惜しまず、珍しいものを買い集めている商人がいました。彼の一番の自慢は金ムクの仏像です。だから、それを仏壇の奥に仕舞いこみ、お扉も年に三度、お盆とお彼岸にしか開けませんでした。ところで、その店に大変信心深い店員がいました。彼には、そんな立派な仏像を買うお金もありません。でもたまたま道端で見つけた木ぎれを、仏さまのお姿に見たてて、部屋の棚にまつり、朝晩、ご飯とお水を供え、お線香をあげていました。そんな店員に、ある日主人は、面白半分に、「お前も大層信心しているようだが、どうだろう。お前の大切にしている木ぎれの仏さんと、私の金ピカの仏さんとどちらがご利益があるのか、カケをしてみないか」といいました。「とんでもねぇ、そんな罰当たりなことは出来ねえだ」と断りましたが、主人は聞き入れません。「そうだ、2つの仏さんに相撲をとらせよう。そうすれば、どちらが有難いかハッキリ分かる。」自分の思いつきに夢中になった主人は、さらにこう言ったのです。「もし、お前の仏さんが勝ったら、私の財産はみんなあげるよ、それなら、いいだろう」自信満々の主人は、さっそく座敷の机の上に土俵を作り、店のみんなを呼び集めました。店員はしぶしぶこれに従いましたが、木ぎれの仏さまに、「おら負けたっていいだ。その時は仏さま、二人でこの店を出るべぇ。」とささやきました。
いよいよ、主人と店員の仏さまの大勝負です。みんなの注目の中、2つの仏さまは、ガップリ4つに組みました。どちらもビクともしません。お互いに持てる力を出し合って必死です。ところが10分ほど経った時、金の仏さまがコロリと倒れ、主人はまっ青、思わず「高い金を出したのに」と叫びました。ところが金の仏さまは、「いくら高くたって、年に3度しかご飯をあげてもらえないのでは、力も出んわい」と答えたのです。それからは、この主人、店のみんなが仏さまを拝めるようにと、お扉を開けて、お線香の煙を絶やさなかったそうです。