シーズンは過ぎましたが、夏になると決まって、お化け屋敷(幽霊屋敷)に行く人が多くなるそうです。
さて、お化けと幽霊の違いはわかりますか?
お化けは、化けた物であり、無下に殺され、恨みを抱いて死んだ動物などが違う姿をとって現れるもの。幽霊は、ヒトが亡くなり肉体が消滅した後も、この世に未練や恨みがあるため成仏できず、浄土にゆけない魂がそれらしき姿を持って現れるものです。
ところで、あなたは幽霊を見たことがありますか?
そこで、幽霊という言葉の語源を調べてみることにしました。霊というのは、たましいという意味だということは、どなたもご承知でしょう。その上にある幽という字は、かくれたとか、暗い、あるいは、かすかなという意味を表す言葉なのだそうですから、幽霊がなかなか見えないものだとしても、それはなんの不思議もないことになります。
だけれども、幽霊が居るとするならば、その姿を一度でいいから見てみたいと思うのも、これまた人間の感情というものではないでしょうか。
昔から、これが幽霊だといわんばかりの絵が描かれ、今日に至るまでその作品は数多く残されています。その作品を見てみると、三つの共通点があることに、わたしは気がつきました。
その一つは、どの幽霊の絵も、髪が長いということでした。
「なんでだろう」と友だちに尋ねると、「幽霊とは、成仏をしていないたましいのことをいうのだろう」と前置きした後で、「後ろ髪を引かれるという言葉を知っているかい」といったのです。
その言葉が、人にとってあきらめきれない思いを意味するものであることは知っていました。「だから、その思いを伝えるために幽霊の髪は長いんだよ」という友だちの言葉に、なんとなく納得したものの、「それじゃあ、なんで手は、だらっと下げているんだい」と第二の質問をしたのでした。
すると、友だちは、ウホンと咳をした後、「それはだな、思いきれない思いに対して、手の打ちようがないという恨み心を表しているんじゃないのかな」と自信なさげな返事をしたのです。
そこで私は、三番目には、「それじゃあ、足が描かれていないのは、なぜなの?」と、ちょっと意地悪な質問をしたのでした。
すると、姿勢を立て直したのか、友だちは、「前にも進めない、後にも戻れないという幽霊の悲しみを表しているんだよ」との答えを出したのです。そして、これが結論だといわんばかりに、「そんな先行きが出きない幽霊に、ちゃんと引導を渡してやるのが、お前ら坊さんの仕事だろう」といったのです。
そういわれれば、私には「その通り」と答える他はありません。
だけれども、よくよく考えてみれば、あの幽霊の絵は、この世を去った人よりも、この世にしがみついている私たちの心を描いたものではないだろうかと思ったのです。
いずれは、この世に別れを告げなければならない私たちです。それならば、しっかりと足跡を残して、次の世代に旅立とうではありませんか。