ある本にこんな話がのっていました。
近所の道端で小さな子供が、二人で話をしています。
「おい、お前の父さんの名前なんていうんだい?」「おれの父さんかい?おれの父さんの名前は潤一というんだ。お前の父さんは?」「僕の父さんは久というんだよ」。子供たちは続けて「じゃ、君の母さんの名前はなんていうんだい?」「おれの母さんの名前は『オイ』というんだ」「おかしいなあ、僕の母さんも『オイ』というんだ」と不思議そうに話していました。きっと二人の子供のお父さん達が、奥さんをいつも『オイ』と呼ぶから、二人は、お母さんの名前は『オイ』なんだと思ってしまったのでしょう。
これと似た出来事に私も出会ったのです。
ある日、檀家さんの家にお経に伺った時、玄関で「ごめん下さい」と声をかけると、四才くらいの子供が出てきました。「おばあちゃんいる?」と尋ねると、「うん」と頷いて、奥に向かって、「くちょばばあ!!ぼうさんが来たよ」と叫んだのです。これには私もびっくりしてしまいました。あどけない四才くらいの子供がおばあちゃんに「くちょばばあ」と言ったのです。きっと大人たちが子供の前で不用意に、おばあちゃんの事を「くそばばあ」と言っているのを聞き、覚えたのでしょう。これでは、いくら表面をとりつくろっても、思わぬところでボロが出てしまいます。
仏教には、「因果応報」という言葉があります。人がよい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるという意味です。子供は、私たち親にとつては鏡のような存在です。私たちが何気なくしたり、言ったりしていることに、子供たちは敏感に反応するのです。ならば、率先してよい行いをすることを心がけるべきです。実際、お経に伺っても、子供さんがすすんで後ろに座り、大きな声で一緒にお経をとなえるようなお家に行くと「ここは、うまくいってるな」と嬉しくなります。お仏壇は家の中心、その家の光の源です。親を大切にする子供に育ってほしいのなら、自分がご先祖を敬う姿を示すことです。一日に一度は、手を合わせ感謝の祈りを捧げて下さい。そうすれば、ご先祖も必ずあなたの家を光りあるものにしてくれるはずです。