「死んでも、命がありますように」といううたい文句が、昔はありました。今では、そんな事をいう人は、ほとんどいないと思います。
でも、私は、このうたい文句に、とても心引かれるのです。なぜなら、死んだら、それで、全ておしまいという考え方に、ある種の不安を抱いているからです。
昔の人たちは、この世が苦しければこそ、生まれ変わった時、幸せになりたいと願ったといいます。その願いを託したのが、「死んでも、命がありますように」という言葉ではなかったのではないでしょうか。
ところが、現代では、そんな切実な願いとは反対に、「死んでも、また生き返る」と楽天的に思っている子どもたちが、かなりなパーセントで存在するという報告がなされています。
覚えておいででしょうか?それは、今から24年前、中学生が小学生を惨殺し、その首を学校の門に晒したという前代未聞の事件が起きた兵庫県で立ち上げられた、「生と死の教育研究会」のアンケート調査によって発表されたものです。
その報告によれば、一般には、人間というものは、一度死んだら、二度と生き返らないという認識が7歳の頃からはじまり、9歳までには確率するのだそうです。ところが、4千人以上ものアンケート調査をした結果、9歳以上になっても20パーセントほどの子どもが、人間は死んでも、生き返ると答えたのだそうです。
これを研究科では、「揺らぎ現象」と呼んでいますが、この揺らぎのパーセンテージが、年を重ね、中学生になっても減少していないことに大きな問題があるのではないだろうかと研究会は提言しています。
それというのは、この会では、揺らぎの大きな原因のひとつとして、今、子どもたちの間で流行しているパソコンやテレビゲームに注目しているからです。そのゲームの中には、暴力や人殺しの場面が、ごく当たり前の事のように映し出されています。研究会では、子どもたちは、その影響を大きく受けているのではないだろうかと推測しました。その因果関係は、未だはっきりした結論は出ていません。でも子どもたちの中に、ゲームの世界と現実の世界の区別がつかなくなっている子が、かなりの割合を占めているということは明らかになっています。しかも、そんな子どもたちの多くが、「両親に愛されているとは思わない」と回答したというデータも出ているのです。
研究会の考えが、これから、どうなるのかは分かりませんが、私に言わせれば、これは、明らかに、今を精いっぱいにいきようとする心構えが現代人には失われている結果だと思うのです。そこで、今の子どもたちに教えたくなります。「今日をちゃんと生きない人には、明日は来ないのだよ」と。