おサルさんは人間に一番近い動物だといいます。いろんなおとぎ話の中におサルさんが出てきますが、その中で一番有名なおサルさんは、やっぱり孫悟空でしょう。三蔵法師のお伴をしてインドまで旅をするスーパーモンキー、いわゆる正義の味方ですが、昔は大変な暴れん坊でした。
そんな孫悟空を懲らしめてやろうと、ある日お釈迦さまは「悟空よ、お前は私のこの手の平から飛び出すことができるかな」とおっしゃいました。「なんだ、そんなこと」と悟空は自慢の如意棒片手にきんとん雲にとび乗ると全速力でスタートしました。「手の平はおろか、宇宙の果てまで飛んで、お釈迦さまの鼻をあかしてやる」そう思って力の限り空を飛ぶ悟空の行く手に、五本の柱がそそり立っているのが見えました。「これが宇宙の果てだな」と思った悟空は、真ん中の一番大きな柱に、自分の名前を書きこむと急いでお釈迦さまのところに引きかえしました。そして「やい、おれは天の果てまでいってきたぞ、どんなもんだ、俺に出来ないことなんてあるもんか」と得意になっていいました。
お釈迦さまはニッコリ笑って、その「宇宙の果てとはこれの事かな」と中指をお出しになったのです。びっくりしたのは孫悟空、「自分の力にうぬぼれたサルよ、そなたの自慢した力も、せいぜい私の手の平で遊ぶにしかすぎないもの、よくよく反省するがよい」とお釈迦さまは岩の中に悟空を閉じこめられたのです。
この話を読んで、私はふと、これは人間も同じことではないかと思いました。現代は文化が進んで、他の星にもロケットを飛ばせる時代、科学の発達によって、どんな望みも叶えられるのではないかと思える時代です。ところが、そんな人間のうぬぼれがヘタをすれば一瞬にして地球を亡ぼしてしまうかもしれないのです。このままでは、いつなんどき人類は孫悟空のようにお釈迦さまの懲らしめを受けるかもしれません。お経の中でも、お釈迦さまは「今此の三界はこれ我が有なり、その中の衆生は悉くこれが吾が子なり」と説かれています。おサルさんより三本毛の多い私たちは、この世に生かされている事を早く気がつかなければならないでしょう。